【税務コラム】2026年12月施行!iDeCo(個人型確定拠出年金)の大改正ポイント

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老後の資産形成手段として広く利用されているiDeCo(個人型確定拠出年金)。2025年6月に成立した年金制度改正法により、2026年(令和8年)12月から大幅な制度変更が行われることが決まりました。
掛金の上限額の大幅引き上げや加入年齢の拡大など、利用者にとって大きなメリットがある一方、受け取り時のルール変更など注意すべき点もあります。今回は、改正のポイントと活用のコツを整理してお伝えいたします。

1. iDeCoとは?基本のおさらい

iDeCoは、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする形で、自分で掛金を拠出・運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。最大の特徴は、以下の3つの税制優遇にあります。

iDeCoの3つの税制優遇

タイミング税制優遇の内容
① 掛金拠出時掛金が全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象
② 運用期間中運用益が非課税で再投資可能
③ 受取時一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除の対象

掛金は月々5,000円から、1,000円単位で自由に設定でき、原則60歳まで引き出せない代わりに、強力な節税効果と老後資産形成の両立が可能な制度です。

2. 2026年12月改正のポイント①:拠出限度額の大幅引き上げ

今回の改正で最も注目されているのが、掛金の上限額の引き上げです。職業区分ごとに以下のように変更されます。

拠出限度額の変更(2026年12月施行予定)

加入区分改正前(月額)改正後(月額)
第1号被保険者(自営業者・フリーランス等)6.8万円7.5万円
第2号被保険者(会社員・企業年金なし)2.3万円6.2万円
第2号被保険者(会社員・企業年金あり)2.0万円6.2万円(企業型DC等との合算)
第2号被保険者(公務員等)2.0万円6.2万円(共済掛金等との合算)
第3号被保険者(専業主婦・主夫等)2.3万円2.3万円(変更なし)

※第1号被保険者の上限は、国民年金基金または国民年金付加保険料がある場合、それらと合算した金額となります。

特に大きな変化は、会社員(第2号被保険者)の上限が一律で月額6.2万円に統一される点です。これまでは勤務先の企業年金制度の有無によって細かく異なっていましたが、シンプルでわかりやすい制度になります。

節税効果のイメージ

例えば、年収600万円の会社員(企業年金なし)の方が、改正前の月額2.3万円から改正後の月額6.2万円に拠出額を引き上げた場合、所得税・住民税合わせて年間約14万円の節税効果が見込まれます(所得税率20%、住民税10%の場合)。

3. 2026年12月改正のポイント②:加入可能年齢の引き上げ

これまでiDeCoに加入できる年齢の上限は「65歳未満」でしたが、改正後は被保険者の種別を問わず「70歳未満」まで引き上げられます。
人生100年時代と言われ、60代以降も働き続ける方が増えている現代に対応する改正で、給与収入を得ながら60代後半もiDeCoで節税しつつ資産形成を続けられるようになります。
ただし、すでに老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給している方など、一定の条件を満たさない場合は対象外となります。

4. 2026年4月改正のポイント③:マッチング拠出の要件緩和

企業型確定拠出年金(企業型DC)にお勤めの会社員に関係する改正として、「マッチング拠出」の制限緩和があります(2026年4月施行)。
マッチング拠出とは、企業が拠出する掛金(事業主掛金)に従業員が自身の給与から上乗せして拠出する仕組みです。これまでは「従業員の掛金は事業主の掛金額を超えてはいけない」という制限がありましたが、この制限が廃止されます。
会社の掛金が少額でも、全体の限度額の範囲内であれば、従業員自身の判断で大きく上乗せできるようになり、企業型DC加入者にとっても節税の幅が広がります。

5. 注意点①:受け取り時の「5年ルール」が「10年ルール」へ

メリットの大きい改正が並ぶ一方、受け取り時のルール変更には注意が必要です。
iDeCoを一時金で受け取る場合、退職所得控除が適用されますが、勤務先の退職金と受取時期が近いと、控除枠の重複調整により実質的に控除額が減ってしまいます。
これまでは、iDeCoの一時金を退職金より先に受け取る場合、5年以上の間隔を空けると控除枠を別々に最大限活用できる「5年ルール」が適用されていました。
しかし、2026年1月以降に一時金を受け取るケースから、この期間が「10年」に延長されます。

受取順序による控除のルール

受取順序適用ルール
iDeCo一時金 → 後に退職金10年ルール(2026年1月から / 改正前は5年)
退職金 → 後にiDeCo一時金19年ルール(従来通り)

例えば、60歳でiDeCoを一時金で受け取った場合、勤務先の退職金にも退職所得控除を満額適用させるためには、70歳まで待つ必要があるということになります。実質的に、退職金とiDeCo一時金の両方で控除を最大限活用するのは難しくなったといえます。

6. 注意点②:DBとの合算枠

確定給付企業年金(DB)に加入している方は、iDeCoの拠出可能額が「DB掛金相当額との合算で月額6.2万円以内」となります。

これまで「DBの掛金相当額がわからずiDeCoを始められない」という実務上の障壁がありましたが、今回の改正ではDBの掛金相当額の標準的な算出ルールの整備や企業による情報開示の強化が図られ、加入者が自分の拠出可能額を把握しやすくなる見込みです。

7. 改正に向けて、今から準備すべきこと

2026年12月の改正に向け、現時点で検討・準備しておきたいポイントをまとめます。

すでにiDeCoに加入している方

  • 改正後の上限額に合わせて掛金を増額するかを検討する
  • 掛金の変更手続きには金融機関での書類提出が必要で、反映まで1〜2か月かかる場合がある
  • 退職金の受取時期との関係で、最適な受取方法・時期を再検討する

これからiDeCoを始める方

  • ご自身の加入区分(第1号・第2号・第3号)と上限額を確認する
  • 勤務先の企業年金制度の有無や種類を人事・労務部門に確認する
  • 無理のない掛金額で長期積立を行う計画を立てる

経営者・個人事業主の方

  • 第1号被保険者の場合、上限が月額7.5万円(年間90万円)まで拡大
  • 国民年金基金や小規模企業共済等とのバランスを考慮した資産形成プランを検討
  • 役員報酬の設定や法人税対策との総合的な税務戦略を見直す

まとめ:拡大されたメリットを賢く活用しましょう

2026年のiDeCo改正は、加入年齢の拡大・拠出限度額の大幅引き上げ・マッチング拠出の制限撤廃と、利用者にとってメリットの大きい「改善」となります。所得控除の枠が広がることで、現役期間中の節税効果が大きく拡大することは、高インフレ局面で家計を守る観点でも重要な意味を持ちます。

一方で、退職金との受取調整ルール(10年ルール)など、出口戦略をしっかり設計しないと本来のメリットを十分に活かせないケースも出てきます。「拠出する」だけでなく、「いつ・どのように受け取るか」までを総合的に考える視点が、これまで以上に求められる時代となります。

iDeCoの活用方法、退職金との受取調整、節税シミュレーションなど、老後資産形成と税務に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。お客様の状況に応じた最適なプランをご提案いたします。

西川会計事務所

※本記事は2026年5月時点の情報および公表されている改正予定に基づいています。今後、制度改正等の進捗により、内容が変更される可能性があります。